轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

「講談倶楽部」1959(昭和34)年1月~9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 页

青空文庫

と彼は云った、「お師匠さんはおいででしょうか」

小女はどうぞと云って、微笑した、「待っていらっしゃいます、どうぞおはいり下さい」

彼は家の中へはいった。かなり間取の多い家らしい、中廊下をいって左へ曲ると、右手の襖の前で小女は停り、「いらっしゃいました」と声をかけた。

「どうぞ」と中から若い女の声が聞えた、「まさちゃん、あとはいいからね、あんたいまのうちに使いにいって来ておくれ」

「はい」と小女が答えた、「門はあけたままでいいでしょうか」

「門は閉めていってちょうだい」

まさという小女は去り、徳次郎は声をかけて襖をあけた。そして、彼が部屋の中へはいるとすぐ、そこを閉めて、こっちへ来て下さい、という声が聞え、徳次郎は云われるとおりにした。

それから約四半刻――襖は閉ったままで、部屋の中はひっそりしていた。なにか話しているのだが、どちらも囁き声のようで、言葉は殆んど聞きとれなかった。

家の裏手のほう、神田明神社のあるほうで、しきりに鶯が鳴いていた。まだ幼ない鳥とみえ、その囀は片言の舌っ足らずで、笹鳴きのあいだに偶然「ほ、きょきょう」とはいる。すると自分でも吃驚するのか、または恥ずかしくなるものか、暫く気まずそうな沈黙が続き、やがてまたさぐるような、自信のない調子で鳴きはじめるのであった。