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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
其六
其六
何事に罵り騒ぐぞ、と上人が下したまう鶴の一声のお言葉に群雀の輩鳴りを歇めて、振り上げし拳を蔵すに地なく、禅僧の問答にありやありやと云いかけしまま一喝されて腰の折けたるごとき風情なるもあり、捲り縮めたる袖を体裁悪げに下してこそこそと人の後ろに隠るるもあり。天を仰げる鼻の孔より火煙も噴くべき驕慢の怒りに意気昂ぶりし為右衛門も、少しは慚じてや首をたれ掌を揉みながら、自己が発頭人なるに是非なく、ありし次第をわが田に水引き水引き申し出づれば、痩せ皺びたる顔に深く長く痕いたる法令の皺溝をひとしお深めて、にったりと徐やかに笑いたまい、婦女のように軽く軟らかな声小さく、それならば騒がずともよいこと、為右衛門汝がただ従順に取り次ぎさえすれば仔細はのうてあろうものを、さあ十兵衛殿とやら老衲について此方へおいで、とんだ気の毒な目に遇わせました、と万人に尊敬い慕わるる人はまた格別の心の行き方、未学を軽んぜず下司をも侮らず、親切に温和しく先に立って静かに導きたまう後について、迂濶な根性にも慈悲の浸み透れば感涙とどめあえぬ十兵衛、だんだんと赤土のしっとりとしたる