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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

しばらくすると、次の間になっている脱衣場のドアが静かにひらいて、黒覆面のままのお嬢さんがはいってきた。

「ちょうどよい加減でございます」

蘭子は手を拭きながら、脱衣室にあがって、お嬢さんの前に小腰をかがめた。

「そう。ではね、お前も着物を脱いでね、あたしと一緒にお風呂にはいるのよ。そして、あたしのからだを洗ってくれるのよ」

なるほど風変りなお嬢さんであった。小間使いと一緒にお風呂にはいるなんて、妙な趣味もあるものだ。それにしても、あの覆面頭巾をどうするつもりなのだろう。あのまま湯の中へはいるのかしら。蘭子はいささか面くらって、だまって突っ立っていると、たちまちわがままお嬢さんの癇癪声が響きわたった。

「着物をぬぐのよ。何をぼんやりしているの。早くなさいな」

ああ、これが、月給百円の意味なんだな。どんな無理を言われても、さからってはいけないというのは、ここのことなんだな。蘭子は仕方なく帯を解きはじめた。田舎娘にしてはからだが少し白すぎやしないかしらと心配しながら、次々と細紐を解いて行った。

「お嬢さま、あなたも着物をお脱ぎなさいませんか」

相手が突っ立ったまま、いつまでも、じっとしているので、そう勧めてみると、令嬢は、やっぱり怒ったような声で、