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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

二匹の人獣は、淡い車内燈の光の前で、寸分違わぬ顔と顔とを突き合わせ、牙をむき、敵意に燃えて睨み合った。

恩田の顔には、けだものが鏡の前に立たされたような驚愕の表情があった。お化けにでも出っくわしたような恐怖の色が、まざまざと読まれた。

「お前、いったい誰だ?」

おびえた声で尋ねた。

「お前の兄弟分さ」

「ばか言え。ほんとうに誰だ?」

「当ててみたまえ」

恩田は気持を落ちつけるようにして、しばらくだまっていたが、突然恐ろしい形相になって叫んだ。

「貴様、変装しているんだな。わかったぞ、わかったぞ、貴様明智だろう。明智小五郎だろう」

「ハハハハハ、やっとわかったか。お察しの通りだよ。君をこんな目にあわせる人間は、僕のほかにはありやしないよ。ところで、どうだね、僕の変装ぶりは? 誰が見たって、君とソックリだろう。この変装でもって、君のおやじさんの眼をあざむくことはできまいかしら。君はどう考えるね」

「なに、おれのおやじだって?」

「そう、君のお父さんだよ。君を捕縛しただけでは少し物足りないからね。ついでに親子もろとも引っくくって警察の方へ引き渡してやろうかと思うのだよ」