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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
名犬シャーロック
首の次には手が、足が、想像もつかない残虐さで、次々と引きちぎられて行った。そしてそれらの美しい八ツ裂き死体は、まるで大根かなんぞのように、無神経に、傍若無人に、いやむしろこれ見よがしに、闇の濠端へ投げ捨てられたのであった。
名犬シャーロック
警視庁捜査一課長恒川警部は、ちょうど寝入りばなを叩き起こされた。役所から帰って、坊やと遊んで、少しばかり読書をして、つい今しがた寝についたばかりであった。叩き起こしたのは明智小五郎である。彼は芝浦の公衆電話を飛び出すと、タクシーを拾って自宅に急ぐ途中、その道筋に当たる恒川氏の宅をおそって、人間豹逮捕の助力を乞うたのである。
恒川氏はむろん床を蹴ってはね起きた。そして、この商売敵でもあり、親しい友だちでもある民間探偵から、事の仔細を聞き取ると――彼は今宵の明智の計画についてよく知っていたから、彼の醜怪な「人間豹」の変装には驚かなかった――すぐさま本庁に電話をかけ、腕利きの刑事を選び、明智探偵事務所へ急行するように命じておいて、手早く制服を身につけると、そのまま明智のタクシーに同乗した。
「あ、ちょっと待ってくれたまえ。