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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

の敵であった。彼らは声を揃えて、逃げ行く悪魔を囃し立てた。気の早い兄いたちは、二人三人と、勇敢にも丸太棒をよじ登って、「人間豹」を追っかけはじめた。Z曲馬団の人たちもおくれはしない。道具方の青年、空中曲芸の軽業師などが四人五人、明智小五郎の指図を受けて、猿のように天井へと駈け上って行った。

Z曲馬団と「人間豹」親子とは、別に深い関係があるわけではなかった。ただ二匹の猛獣をつれた親子のものが、西洋帰りと称して、Z曲馬団に取っては非常に有利な条件で、臨時加入を申し込んだものだから、殺人犯人とは夢にも知らず、その申し込みに応じて、宣伝などをしたまでであった。したがって、Z曲馬団の全員も、今は決して「人間豹」の味方ではなかった。

「そとへ廻れ、そとへ廻れ、人間豹は屋根から飛び降りて逃げる気だぞ」

群集の叫び声に教えられるまでもなく、明智はすでにその手配をしていた。警官隊の一部と曲馬団の男たちが、テントのそとへ飛び出して、小屋の周囲に散兵線を敷いた。明智自身も彼らのあとにつづいてそとに出ようとした。そとの広場に立って、屋根の上の捕物を監視したいと思ったのだ。