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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「さあ」

「愛読してくれるようなら興味があるんだろう?」

「それはあるさ」

「大衆物は女の批評が一番当る」

「批評的に読むんじゃない。君と僕の自叙伝だと思っているから、奥さんと二人で研究しているのらしい」

「研究的に読んで貰えれば尚お結構さ。読後感はどんな風だい?」

「読後感で僕に突っかゝって来るんだよ。元来僕の旧悪を探すために読むんだから」

「おや/\」

「文章そのものゝ為めに読んで貰えると思うと大間違いだよ」

「グイッと来たね」

「止めを刺して置く」

と言って、菊太郎君はもう語らなかった。味をやった積りだろう。

さて、閑話休題、小説の本筋に戻る。

考えて見ると、僕は実に人が好く出来ている。半年ばかりというもの、学校の帰りを全然菊太郎君の都合のためにお附き合いしていたのだった。真直ぐに家へ帰ったことが殆んどない。少し雨の降る日でも、菊太郎君のお供をして、健康に貢献する散歩だと思っていた。精神修養の一端とさえ考えていた。その初め菊太郎君が、

「君、この頃君は運動不足じゃないかい? 顔色が悪いぜ」

と注意してくれたのだった。

「そんなこともないだろう」

「いや、何となく冴えないよ」