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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

学校の勉強ばかりが人生じゃないぜ」

「それは分っている。怠けものだけれど、君だって無論好いところはあるさ。認めてやるよ」

「ところで何うだい?」

「何が?」

「乃木神社へ廻ろう。あすこから虎の門まで歩くと丁度好い散歩になる」

「宜かろう」

「友達が発心した時は附き合ってくれるものだよ。君の為めにだって屹度なる。僕は約束して置く。将来君が発心した場合、僕は犬馬の労を執る」

「無条件で附き合うよ」

僕達は学校の帰りを乃木坂まで電車に乗って、それから虎の門まで歩くのが習慣になった。成程、丁度好い散策だった。これが三月も四月もつゞいた。冬になって雪の降る日にも欠かさなかった。菊太郎君は必ずしも乃木神社に参拝するのではない。

「乃木さんのような豪い人の住んでいたところから、虎の門まで毎日の規則として歩けば精神修養になる。僕達は意志が弱いから、偉人と結びつかないと、何をやっても長続きがしない」

というのだった。僕は一寸感心した。元来奮発心のない菊太郎君としては大出来だと思って、奨励の態度を執った。引っ張られるというよりも寧ろ自ら進んで附き合った。

ところが今し打ち明け話を聞いて呆れ返った。