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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「まあ。オホヽヽ」

久子夫人が笑い出した。

僕は楽観した。菊太郎君の場合より形勢がグッと好い。先方は親しい友人の奥さんの妹だ。僕はそのお父さんの加藤さんを知っているし、仲人役の菊太郎君も形式的ながらもう紹介して貰っている。切っかけがないと思って諦めていたら、切っかけだらけになって来たのである。大手搦手から攻めが利く。唯一つ案じられるのは先口だ。それを考えると暗くなる。

「これは屹度纒まる。是が非でも僕が纒めて見せる」

と菊太郎君が翌日言った。

「何分頼む」

「大舟に乗った気でい給え」

「君の大舟には懲りているけれど、今度は棚のものを取るだけの労力らしいから安心している」

「然う手軽に見られちゃ張合がないな」

「お手軽に限るんだ。僕は君のように無理な註文をしない。知っているところから知っているところへ足を運んで、極く当り前の口上を言って貰えば宜いんだから」

「恩返しだから、些っと骨を折りたいんだけれど、これはシーザーだ。我既に勝てり」

「違う。我、来たり、見たり、勝ちたり」

「然うか? 兎に角、朝飯前だ。これが纒まらないようなら、僕は余っ程何うかしている」

「しかし先口ってことがある。