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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

彼はウヌと呻ってその白いものをギュッと掴えた。

「ギャッ……」

と悲鳴を挙げたのは、白い怪物ではなくて大隅学士の方だった。彼がその白い尾に触るか触らないうちに、彼の身体はドーンと後方へ跳ねとばされた。もうすこしひどくやられると、壁の真中に叩きつけられるところだった。

「何だろう? 人間かそれとも妖怪か?」

彼は再度跳ね起きると、欄干のところへ突進していった。そして暗い外を見た。白い怪物はたしかにまだそこにいた。しかし彼が顔を出すのと一緒に、暗闇の中に紛れこんで、スーッと姿を隠してしまった。

「うぬ、逃がすものか……」

何が何やら分らないながら、彼は追駈けてゆく決心を定めた。そして梯子段を下へトントンと駈け下りて行ったが、そこには、宿のお内儀が倒れていた。

その身体を跳び越えて、彼は往来へ飛んでいった。そしてそこら中、あっちへ走り、こっちへ駈けしたが、その白い怪物の姿を遂に見失った。彼はスゴスゴと、宿の方へ引返した。

お内儀はようやく気がついたものと見え、梯子段の下に半身を起し、腰のあたりを痛そうに撫でていた。

「おお、お内儀さん。今のは、あれは何ですかネ」