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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

「ナ、何ですかって、わたしもあんな恐いもの知らへんがのう。どう見ても幽霊じゃ。先生が寝とらす周りをグルグルと何遍も廻っていたがのう」

「ナニ僕の寝ている周りをグルグル廻っていた?……やっぱりあれは幽霊かなア」

大隅学士はドキンとした。果してあれは幽霊であろうか。日本の幽霊は、ああいう場合、糞落ちつきに落ちついて、背後をふりかえり、痩せ細った手首をフラフラと動かして空間に小さな円周などを描き、恨めしそうな顔をヌーッとこっちへ出すといったのが定石なのであるが、今見た幽霊の方は、掴もうとしたのに、ドンと恐ろしい一撃を加えて、スーッと逃げだしていった。その激しい力や活溌な行動からいって、むしろ何か生き物に近い感じがする。もしそれが幽霊だとすると、よほど生前活溌な武将ででもあったにちがいない。……

と、そこまで考えて来たときに、彼はハッと胸を衝かれたように思った。

(もしや、あれは佐々砲弾の幽霊ではないかしら? それともあの怪力の辻川博士の亡霊だろうか?)

大隅学士は、俄かに失った友のことを考えて、胸をしめつけられるように感じた。しかしあの佐々砲弾が、まさか幽霊になろうとは考えられない。