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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

いかに当時の人倫が乱れていたかを、後世の人に示している。

神武は、どうして、長男を皇太子としないで、三番目の子を立てて、皇太子としたのか、理由は明らかでない。その長男は、ながく政治をおこなっていたのである。長男が、バカでもなく、気ちがいでもなかったことは明らかである。長男としては不満であったであろう。神武は、長子相続の法を排して、次子を立てた。それは、政治上に混乱をまきおこす不賢明な方法であった。

徳川時代初期の学者林羅山は、このことを論じて、言っている。「神武が綏靖を立てたのは、母の愛のゆえであったろうか。神武の長男が、もしも不肖の子であったとしたらば、なにゆえに、早くその処置をなさなかったのか。長男は、神武が、この世を終るまでは、国事をおこなっていた。神武が死ぬとすぐに、その弟が天皇の位についた。長男は不平であった。しかしながら、長男が謀反をはかったことは、不当である。」云々。

羅山は忌憚なく、神武と綏靖とを論じている。そうして、羅山は結語として、「綏靖は太子である、謀反をはかった人を殺したのは、罪がないと言えないこともない。しかしながら、兄弟が殺しあうのは、いかにも悲しいことである。