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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

「アハハハ――、爆薬なんか使ったら、わし達が木端微塵じゃ。マアよく考えて見給え。ここを抜け出す唯一の手段は、わし達が落ちて来たあの天井の陥穽の蓋を開くことじゃ。その蓋を内部から開く唯一の方法は、ホラ、あすこに見えている留め金を、グッと四十五度丈け廻すことじゃ。すると支えがなくなって、蝶番になった板が、自然に下って、あとに出入口の穴があくという訳だよ。分ったかね」

「ですが、あの高い天井の留金をどうして廻すのです。その銀色の道具を投げつけるのですか」

「わしは石投げの名人じゃない。よし命中しても、そんなことで留金は廻らんて」

「じゃ、どうするのです」

守は、この一刻を争う場合、老探偵の余りの落ちつき振りに、もうイライラしていた。

「それはね、手品師の方で魔法のステッキと云われている、ごくありふれた道具なのだよ。これをごらん、僅か二寸程の筒が、引っぱれば引っぱる丈け、どこまでも伸びて来るのだ。一尺、二尺、三尺とね」

あっけにとられた守の前に、見る見る、闇にも光る一丈程の銀色の竿が出来上った。竿の先端には、股になった金属の角が生えている。それが指の代理を勤めようという訳だ。