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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

銀座の案山子

殺した死骸を、こうしてマン・ホールから投込んで置いたのかも知れないぜ」

「ウン、何しろお巡りにそう云って来よう」

一人が駈け出して、附近の交番から警官を引っぱって来る。忽ち人だかりだ。

それから、二人の工夫はかかり合いで、警官に頼まれるまま、散々不気味な思いをしながら、下水の中から問題の死骸を引っぱり上げたのだが、読者も大方お察しの通り、その死骸には胴体も手足もついていなかった。つまり、それは一個の実によく出来た蝋人形の首に過ぎなかったのだ。人形の首に重りをつけて、流れぬ様に浮かせてあったのだ。

銀座の案山子

そういう一聯の出来事が、銀座街を中心に継起して暫くの後、やっぱり銀座通りのRという大洋服店のショウ・ウインドウの前に、妙な男が立止っていた。

型のくずれた黒ソフト帽、画家の様に長く伸した髪、青ざめた顔、ひどい近眼と見えて厚いレンズの二重眼鏡、ピンとはね上った口髭、三角型の顎髯、羊羹色の丈の短いインバネス、その下から二十年も昔流行した、荒い柄の、薄汚れた縞ズボン、破れ歪んだパテント・レザーの礼装靴が見えているという、怪奇映画の主人公みたいな人物だ。