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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
魔法の杖
アア、本物の三笠龍介は、何をしているのだ。彼は果して暗闇の穴蔵を抜け出すことが出来たかしら。若し抜け出したとしても、この危急に間に合うのだろうか。偽探偵の怪物は、まんまと相川操一氏をだましおおせて、今にも珠子を連れ出そうとしているではないか。妖虫は今や、その尻尾を醜くまげて、餌物に飛びかかろうとしているではないか。
魔法の杖
時間を比べると、偽物の三笠龍介が相川邸を訪れた少し前、穴蔵にとじこめられた、三笠探偵と相川守の間には、脱出の工作が進行していた。
「ですが、そんな小っぽけな道具で、どうしてこの地下室が抜け出せるのですか」
暗闇の中から、守青年の声がいぶかしげに訊ねた。
豆の様な、併し非常に光力の強い懐中電燈が、探偵の七つ道具の容器を照らしていた。その円光の中に三笠氏の皺くちゃな指が問題の銀色に光る円筒形の金属をおもちゃにしていた。
「種を明かせばナアンダという様なものさ。しかし、これがあるばかりに、全く不可能に見える穴蔵の脱出が、可能になるんじゃから、不思議じゃて」
老探偵は舞台の手品師の様に勿体ぶった。
「若しや、それはダイナマイトじゃないのですか」