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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
電燈の丸い光が移動するにつれて、人間の手が、人間の足が、人間の腿が、その切口をドス黒い血潮に染めて、次々と彼女の脅えた眼に。
それから人間の胴体丈けが、大きな風呂敷包のようにグッタリと横わって、その下腹部からは、何というむごたらしさ、小腸が、数百匹の蛇と、もつれ出していた。胸部には、二つのふっくらとした乳房が見える。女だ。この無残な轢死者はまだ若い女なのだ。
最後に、丸い光の中に入って来たのは、髪振り乱した娘の首、青ざめた唇の隅から、紅絲のような血を吐いて、一本の枕木の上に、チョコンと、獄門の形でのっかって、半白の目でじっとこちらを見つめている。
珠子は猿轡の奥で異様な唸り声を立てて、いきなり元来た方へ逃げ帰ろうともがいたが、悪魔は咄嗟に彼女を抱きすくめて、その顔を轢死人の方へねじ向けた。
「お嬢さん、サア、よくごらん。そんなに目をつむってしまっちゃ駄目だ。折角面白いものを見せて上げようと云うのじゃないか。目々を開いて、ホラ、よくごらん。可哀相にあの娘さんも、丁度お嬢さんと同じ位の年恰好だね。オヤ、そう云えば、この死人の顔はお嬢さんにそっくりじゃありませんか。