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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

間もなく、年配の店員が常傭の刑事探偵二人を従えて駈けつけて来た。

見物達は、婚礼式の場面の前から追いのけられた。二人の刑事と蘭堂とが舞台に上って行った。

「やっぱりそうだ。これは人形じゃない」

一人の刑事が、近々と花嫁人形を覗き込んで叫んだ。

「だが、この手は両方とも、コチコチ云うぜ、確に人形の手だぜ」

今一人の刑事は、花嫁の両手を叩き合わせながら、不思議そうに云った。

「イヤ、この死人には両手がないのです。賊の為に切取られたのです。だから、手丈けは人形の手がつけてあるのです」

蘭堂はそう説明しながら、花嫁の顔に触って見た。木にしてはあまり冷い。その上、フカフカと弾力があるのだ。

「ヤア、ひどい匂だ。どうしてこの匂に気がつかなかったのだろう。近寄って見たまえ、たまらない匂がする」

刑事の一人が無作法に怒鳴った。

かくして、花園京子の死体は発見されたのである。

賊は確に彼の約束を実行した。衆人環視の百貨店内に於て、恐ろしき結婚式を挙行した。

だが、発見されたのは花嫁ばかりだ。花婿は一体どうしたのだ。お嫁さんばかりの婚礼式なんてないことだ。

すると、このとりすました花婿人形が、やっぱり本物の人間なのだろうか。