轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页

青空文庫

仕方がないので、階下に飛んで降りて、女中に警察と附近の医者へ電話をかけさせて置いて、又元の二階へ取って返した。こんな時に書生がいてくれれば助かるのだが、それも此頃丁度不在なのだ。

ゴリラよりも気がかりなのは夏子のことだ。手傷を受けた丈けならいいが、もしや殺されてしまったのではあるまいか。

夏子は部屋の片隅にもみくちゃになって倒れていた。調べて見ると、息も絶え脈もなくなっていた。喉をしめられた跡が紫色にふくれ上っている。右頬を喰いつかれたと見え、ザックリ肉が開いて、顔中が紅酸漿の様に真赤だ。素人目にも到底蘇生の見込はない。

ゴリラ男が云い残して行ったテーブルの上を見ると、そこに実に奇妙な品々を発見して、蘭堂は愕然とした。

一着の古い黒の背広服、黒天鵞絨のソフト帽、その横に白紙をのべて、上に黒眼鏡と、長髪の鬘と、つけ髭が並べてある。

その側に、数枚の手紙の様なものが、キチンと重ねて、叮嚀に紙ナイフが重しにのせてある。

蘭堂は、悪夢の続きでも見ている様な気がした。この服、この帽子、この眼鏡、凡て黒瀬と名乗った怪画家のものではないか。ゴリラに毒薬の注射をして逃げ去った、恐怖王その人と覚しき怪人物のものではないか。