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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
彼の使命は、西国から輸送される軍需船を、大坂の海口で封鎖するにある。
毛利方では、堺の浦に忽然と出現した一船団を、当然にすぐ探知していたが、
(一夜作りの織田の水軍、何ほどのことがあろう)
と、多寡をくくって、相かわらず、九鬼船隊の視界のまえを、悠々と、兵糧や武器を満載して舟行していた。
(やらせておけ。やらせておけ)
右馬允嘉隆は、時を計っていた。そしてその年七月の烈風の夜――毛利方の大船団が大坂港へはいったのを見とどけると、
(こよいこそ)
と、舳艫をしのばせて襲いかけた。
――九鬼右馬允は九艘の大船に、無数の小舟を相添へ、山のごとく飾りたて、敵船まぢかく寄せつけ、やにはに大鉄砲をいちどに放ち懸る。
と、当時の記録に見える。「山のごとく飾り立て」とあるのは船楼や艫に、旗幟だの鑓や熊手を植えならべて進んで行ったものであろう。
この夜、風浪が高かったので、碇泊中の西国船は各※(二の字点、1-2-22)、船と船とのあいだに繋綱をとりあい、また海泥に深く碇を下ろしていた。
たちまち一艘が火災を起した。すわと、抗戦に立ち向ったときは、ほかの船にもあちこち飛火が移っていた。