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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

東海風流陣

それに、徳川家康は、自身、譜代の家臣とともに、この大宮に待ちあわせて信長の迎えに出ていた。信長一行がここへ着いたのは、もうとっぷり暮れた宵であったが、その明るさは昼をあざむくばかりだった。

東海風流陣

その夜の泊りは、大宮神社の社内だった。本殿、拝殿をのぞく以外は、すべて信長一行のために、旅舎として宛がわれた。

わけても、信長の座所は、金銀珠簾の結構をつくし、彼が一夜の休息のために、すべて新たに普請したものと思われる。

とりわけ警固には万全を策した用意が窺われる。四方には木小屋を設け、信長の直属の旗本を配し、また三河武士の隊を、随所の木戸に置いて、座所にはいささかの不安も感ぜしめない。

「信長にたいし、かくまで、心を用いられ、御誠意のほど、奇特に存ずる」

容易に、満足を満足といわない信長も、その夜、家康の心からの歓待には、こういわずにいられなかった。

「――それにひきかえ、北条氏政の仕方は、心のそこが見え透いておる。甲府から大宮までの道すがらにも、随所に氏政の手勢が働き様は、この眼で確と見て参った。かくせぬものは、人の心のうそと真」

信長は酔後についこう胸中の不満をもらした。