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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
丹波・丹後
七月の陽が、海面をも焦くばかり高くなった頃、淡の輪の海上は黒煙にみちていた。毛利方の船はほとんどといってよいほど焼き沈められた。風浪がつよい日なので、炎は高く壮観をきわめた。
このことは、堺、大坂の耳目を震駭させた。信長の勢威を知っても、なお毛利の富力と強大をずっと高く評価している一般民も、これはと、それまでの常識と観念の訂正にまごついた。
抜け目ない信長は、ここに自己の水軍を持つと、それらの大船を連ねて豪壮な船飾りをほどこし、一日、近衛公やそのほかの公卿を堺へ招いて船御覧の催しをした。もちろん彼は民衆を忘れない。貴賤僧俗、男女老幼、すべての者へも船見物をゆるし、堺の数日を船祭に沸きたたせた。
丹波・丹後
山陽の北部には山陰がある。
ふたつを併せて中国という。中国攻略は、当然、二方面作戦にならざるを得ない。
秀吉が、山陽に働いているあいだ、山陰方面の司令官としては、明智光秀が任じられていた。
山陰は、光秀の働き場だった。
ここ数年に、光秀は、よくその任に対して、功を挙げた。
細川藤孝を副将として、丹波、丹後の敵性を、一城一城、攻め陥して行ったのである。