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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
潮声風語
と、その日の状況を記録した筆者、太田牛一もまた感激のなかに浸って書いている。
…………
秀吉は今、京都を通過しながらその日を偲び、また主君の一日の偉大を考え、ひいては自分に顧みていた。
潮声風語
秀吉は、大坂へかかった。
淀川まで来ると、
「先にお着きのお荷駄は、すべて積み終り、御船中のお囲幕も、万端、ととのうておりますれば」
と、九鬼家の使いである。
迎えの使者はなおいう。
「陸路のご予定にございましたろうが、浪華の浦まで道をまげてお立ち越えねがいまする。それよりお船に召されて、海路、姫路へのお渡りまで、われわれども、お供仕りますれば」
秀吉は、淀川に近い休み茶屋の床几をかりて、供の人数と一緒に休息中であったが、口上を聞くと、自身気軽に出て、
「それは、九鬼殿のご好意か」
と、たずねた。
三人の使者の答えには、
「主人の命によってお迎えに罷り出ましたが、お船廻しの儀は、安土の上様から早打をもってのお指図と伺っておりました」
と、ある。
「大儀」
と、秀吉はすぐ承知し、
「九鬼衆の使いにも、茶など与えよ」
と、左右へ心づけた。
彼としては、勿論、もう平定した播州と中央とのあいだの往来などは、さして危険ともしていなかったが、信長はなお、