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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

そういう態勢を作っておいて、信長はおもむろに、

「どうするか?」

と、彼の思慮を、ながめていたのである。

足もとは見すかされていた。さしも全土にわたる教門の勢力をあつめて、この浪華の一丘に、巍然たる特異な法城を構えていた石山本願寺も、もう以前ほどな実力はなくなっていた。

ここ十一年間の推移があきらかにその衰退を実証している。

まず将軍義昭の没落は、その第一だった。遠く聯携して、腹背からたえず信長を苦しめていた反信長派の一環、武田信玄が忽然と死去したことも、本願寺にとっては、片翼をもがれたようなものだったし、つづいて越前の朝倉、江州の浅井、伊勢の長嶋門派の殄滅をうけたことなど――満身創痍の傷手だったといっていい。

わずかにたのんでいた上杉謙信も逝いた。紀州地方の雑賀門徒も、信長にくだってしまった。松永久秀また討たれ、播州の三木城、伊丹城の荒木村重、丹波の波多野一族までが――相次いで、征伐をうけ、本願寺からながめているかすかな希望までを、地上から掃いつくされてしまった形である。

なお強いて、恃めば、

「東には、武田勝頼。西には大国毛利がある」

という豪語も吐けないことはないが、その武田も長篠の一敗に屏息し、西国の毛利も、このところ一戦一退のみをつづけ、加うるに元就以来の保守主義もあるので、果たして、この上積極