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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

「えッ……。では」

茂助は、茫然とするほど、歓びにつつまれていた。こんなにやさしく彼が城地の明け渡しを承知しようとは、まったく予期していなかったからである。

「――だが、あわせて、この儀も慥と、筑前どのへ御念を押しておかれたい。山名の二臣は、飽くまで馘ることはならん。この城の守将は吉川経家なり。守将の責任は一切を負うもの。経家一人の切腹をもって、城中の将兵を始め、難民どももことごとく御保護の下におひき取りねがいたい。――さもなくばこの城を、無血開け渡しは成りかねると」

「仰せ、立ち帰って、主君におつたえ申しあげます」

「筑前どのの麾下浅野長吉どのとは、前々より面識もある。使者の見えたのを幸いに一書、託したいが、届けてくれるか」

「おやすいこと、お届けしましょう」

「しばし、休息していてくれ」

経家は奥にかくれて、手紙を認めて来た。それをあずかると、茂助は間もなく城を出た。

すぐ秀吉に復命した。

秀吉は浅野長吉を呼んで、書面をわたし、内容をたずねた。

「――やはり、自分の一死をもって、すべてを赦されるならば――という旨しか認めてございません」

長吉は、自分宛のその書面を、秀吉に見せた。