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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

「於蘭か。大儀だった」

「岐阜の御金蔵の鳥目一万六千貫、のこりなく束ね直して参りました」

「そして、蔵出しのこと、中将へも、委細頼みおいたか」

「はい。お旨のとおりに」

信長は満足そうに頷いた。

織田中将信忠の岐阜城へ、蘭丸が使いした用件というのは、かねてそこの金蔵に入れておいた巨額な金が、年久しく山積みのままになっているので、信長が、

(さだめし鳥目の束ね縄もみな腐っていよう。一切縄を改めて束ね直して来い)

と、命じたものである。

土蔵の中の金の縄目は何年ぐらいで腐るものか――までを心得ている信長に、蘭丸は心の底から、

(ひとは御主君の軍略の才のみ知って、経済的な御頭脳は余り認めないが……経済といわず、この君に対しては、秘か事は少しもできない)

と、つくづく畏れた。そしてそういう驚嘆に出会うたびに、母の妙光尼のなした過去の過ちが案じられ、鈴木重行を家中に匿っていると聞く明智光秀の一挙一動が心懸りになるのだった。

とはいえ、それは蘭丸一箇の心の影である。或いは、幻に過ぎないほどな、思い過ごしかも知れない。ここでの問題はおのずからちがう。

彼の使いの用件を聞くと、はしたない奉公人の末は、