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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
06 第六分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页
共に茫然たる面持ちで、
「ああ、分らないものですな。伊丹の城に囚われて、所詮、亡いいのちと、諦めていたてまえは生きのび、だいぶ快い快いというていた重治どのが、あれからまだ半年も経たぬまに、こうなろうとは」
そこで、彼は気がついたように――
「これこれ、左右の方々、いつまで共に嘆き沈んでいたとて、どうなろうぞ。――燈火をつけぬか。そして、重治どのの御遺骸を浄め、室を掃って、安置せねばなるまい。いずれにせよ陣葬のこと、万端、充分には参らぬまでも――」
彼が、さしずを始めると、秀吉はいつのまにか、もうそこにいなかった。
ゆらぐ燭の光の中で、人々は寒々と働きはじめた。すると重治の枕の下から、一通の遺書があらわれた。黒田官兵衛に宛てて死ぬ二日ほど前に認めておいたものだった。
――仮に平井山の一部に、重治の遺骸を厚く葬って、何やら、喪旗にふく秋風もさびしく、気落ちのあとの疲れも出て、陣中ともすれば寂寥にとらわれやすい真昼だった。
ひそとした陣幕の内を訪うて、黒田官兵衛は、一通の書を、秀吉に示していた。
「なに、半兵衛の遺書が、枕の下にあったと。……そちへ宛ててか」