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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
05 第五分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页
総五重層の楼である。
その下は大きな石蔵。
石蔵につづいて、大座敷。また無数の座敷。座敷の上に――或いは下に、なお座敷座敷の数は何百あるのか、また何階になっているのやらわからない。
墨梅の間、八景の間、雉子の間、唐子の間など、もう画工は不眠で描いているし、塵も嫌う漆師は、朱欄や黒壁を塗りながら、わき目をふらず、職域に没頭している。
瓦師は、帰化人の一観という唐人が担当していた。中国の焼法によるとかいう。その瓦焼の窯場は湖畔にあって、夜も昼も、松薪のけむりを揚げていた。
「……なるほど。織田どのの眼識はおひろい。このお城の構成を見ると、どこやらに南蛮の風を取り入れたらしい趣があると思えば、唐様のよいところもとり容れ、しかもそれをみな日本化しておられる」
しきりと、遠くからその結構に感心している僧侶があった。一見飄乎とした旅の坊さんでしかないが、眉骨隆く、口は大きく、どこか異相なところがある。
「恵瓊どのではないか」
そっと、うしろから、驚かぬ程に、背を叩いた者がある。彼方に屯している部将たちのうちから、ひとり抜けて来た秀吉であった。
「ほうッ……これは。