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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

三日月

そして、主君勝久、そのほかの面々と評議の後、

「せっかくのおことばながら、この籠城に疲れた小勢をもっては、到底、城中から討って出て、お味方の陣地へ合するなど思いもよりません。――所詮は、他に万全の策を求むるよりほかござりませぬ。何とぞわれらのことは、御懸念なく、お引き払いあるよう、筑前どのへ、お伝えたまわりたい」

と亀井重茲に、返辞を託した。

使いを返すと、鹿之介は、

「一時の恥は忍んでも」

と、ひそかに、書面をしたためて、寄手の総大将毛利輝元へ宛てて降伏状を書いた。べつに吉川、小早川の二将に対しても、その執りなし方を依頼した。

主人勝久の助命と、城兵七百の命乞いであったことはいうまでもない。

けれど吉川、小早川の両川は、鹿之介が再三の詫入れもきかず、飽くまで、

「開城と共に、勝久の首を」

と追求した。

最後には、

「降を乞いながら、憐愍を仰ぐなど、贅沢な云い分。否やあれば、七百の城兵もろとも、屠り尽すまでのこと」

と、断乎たる拒否だった。

鹿之介は、悲涙をのんで、勝久の前にひれ伏した。

「この上は、臣らの力も及びませぬ。……あわれ、お頼り効いもない家来をおもち遊ばしたのが御不運でした。