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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

所詮、人間の肉体は、永遠ではあり得ない。けれど、彼の忠烈とその義心は、長く武門に生きた。

濃藍の夕空に、ふと、三日月の光を仰ぐとき、山中鹿之介幸盛の不撓不屈を想うて、おのずから敬虔な心に打たれる――とは、後々まで、武門の人がみないったことばである。

その人たちの胸をとおして、鹿之介は、永遠に生きたといえる。

その最期のとき、首に掛けていた大海の茶入れと、腰なる新見国行の刀は、彼の首級に添えて、やがて吉川元春の前に送られた。

「もし、足下を討たなければ、いつかかならず、この元春の首が、足下の手に掻き取られたろう。武門のならいである。かくなっては、御身も莞爾として、瞑するほかはあるまい」

元春は、首へ向って、合掌しながら云った。

鹿之介の妻は、彼の領下、出雲の者なので、元春は懇ろにその妻子を、郷里へ送ってやったという。

齲歯

秀吉の手勢約七千五百。

上月を去って、いったんは、その方向を但馬へとって進むかのように思われたが――急に、播州の加古川へ迂回して出て、ここで織田信忠の軍三万と合した。

七月に入っていた。

この大軍にかかられた神吉の城も、志方城も、一揉みに揉みつぶされた。