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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

よろしくお取次ありたい」

と、ひどく厳めしく、退っ引きならないような辞をもって、面会を申し入れた。

取次の寺僧はすぐ戻って来た。

「病間にて、取り散らしておりますが、おゆるしあるなれば、お通りくださいとの、半兵衛様のおことばでした。――何分、草廬もお手狭でございますから」

佐久間信盛は、

「苦しからず――」

と、頷いて見せながら、寺僧のあとに従いて行った。

離れの障子は閉まっている。しきりと咳の声がするのは、病褥にある半兵衛が、やむなき客のため、身を起しているからであろう。

信盛は、しばらく外に佇っていた。雪にでもなりそうな空もよいである。昼ながら南禅寺の山陰はしんしんと寒かった。

「どうぞ」

内から云って、小書院の障子をあけたのは附添いの家臣である。見れば病中の主も、その痩躯を畳へじかに置いて、

「ようこそ」

と、端居して出迎えている。

信盛はつかつか通って、辞儀が終ると、すぐ云い出した。

「昨年、君命として、それがしから達しておいた松寿丸を打ち首になすことは、もはや滞りなくおすましとは存ずるが、その後、確たるお答えのないため、信長公にもお不審をかけられておる。