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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

ふたりは夜に入ると、おたがいに、黒い頭巾を眉深にして、裏門からそっと出て行った。

大賀弥四郎のやしきは彼方に見えて来た。

そこを指さして、山田八蔵が何か彼の耳へ囁きかけると、

「謀叛人ッ。汝らの企みはもう明白だ。そこまで行く要はないッ」

と、ふいに石川又四郎が呶鳴ったので、八蔵は驚いて身を翻したが、――すでに遅かった。

「上意!」

又四郎に組みつかれていた。

だッと、大地に投げ伏せる。そして馬乗りだ。逆らうので、又四郎は二つ三つ彼の顔の真ん中へ鉄拳を喰らわせておいてから、

「騒がない方が身のためだろう」

と、穏やかに諭した。

八蔵はあらん限りの抵抗を試みたが、その無意味を覚ると、脆くもさけんだ。

「く、くるしい。手を、手をゆるめてくれ」

「云い分があるのか」

「まったく貴様は上意をうけて来たのか。――浜松から御詮議をうけている身が」

「愚かや、今知ったか。すべては殿のおいいつけである。詐ってお城から逃げ出したのも、汝ら一味の企みを探らんためにその方のやしきへ逃げ込んだのも……」

「む、む。……では、あざむかれたのか」

「歯ぎしりしたところで、もう及ぶまい。潔く君前で自白したら、せめて打首ぐらいはおゆるしになろう」