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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
05 第五分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页
――おそらくは、僧門にでもかくれたのだろう、という衆評だった。
で、首魁の大賀弥四郎の陰謀は、吟味までもなく、明白であった。
「厳刑に処せ」
と、家康の怒りは、いつになく峻烈をきわめた。
一族――彼の妻子から召使や、交友のある輩でも、その野謀を知りながら黙っていたものは、みな数珠つなぎにされて、念志ヶ原へ曳かれた。
打首、磔、二日にわたって、夥しい血が、大賀一個の叛心のために、士気粛正の犠牲にされた。
ついきのうまで、ひとつ領土に語らい合っていた人も、相見て笑みを見交わしていた者も、いまは刑場の他人として見送られた。傷ましい極みである。しかも国境の近くには、武田勢の進出というただならぬ緊迫の中だけに、領民の憎しみも強かったが、悲しみも深かった。
そして三日目か四日目――いよいよ最後に大賀の処刑をする日となると、激昂した民衆は、それを自分らの意志でやらなければもう承知しなかった。
あわれなのは、大賀の妻であった。取調べの口書によると、彼は捕われる幾日かまえに酒の上であろうが、妻に向って、
(これしきな生活は、まだおれを満足さすものではない。いまにそなたも、御台様と諸人から仰がれるようにしてやるぞ)