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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

喧嘩をすると、じきに菰冠りの呑み口を抜いて、コップで冷酒をも呷った。

「どうも済みません。」

お庄は笑いながら言って、奥の方へ入って行った。

座敷の方では、赤いメリンスの腰捲きを出して、まだ雑巾がけをしている女もあった。並べた火鉢の側に寄って、昨夜仲店で買って来た櫛や簪の値の当てッこをしている連中もあった。

「あれお前さんの弟……。」一人はお庄にこう言って訊きかけた。

「え、そう」お庄は頷いた。

「道理で似ていると思った。」

「同胞だって似るものと決まってやしないわ。」

「当然さ。親子だって似ないものもあるじゃないか。」

てんでんに下らなく笑って、顔の話などをしはじめた。お庄は形の悪い鼻を気にしながら、指頭が時々その方へ行った。奥の小間では、お庄が出る前から飲みはじめて、後を引いている組もあった。都々逸の声などがそっちから聞えて、うるさく手が鳴った。誰かが、「ちょッ」と舌うちして、鼻唄を謳いながら起って行った。お庄も寒い外の風に吹かれながら鼻頭を赤くして上って来た客に声かけて、垢染みた蒲団などを持ち出して行った。

夜お庄は、弟から端書を受け取った。端書には、読めないような生意気なことが、拙い筆で書いてあったが、茶屋奉公などしている姉を怒っている弟の心持は、お庄の胸に深く感ぜられた。