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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

八十五

そして、その方がどんなに自由だか知れないとも考えた。

お庄は箪笥の底から持ち出して、従姉の家へその絵本の入った手匣を持ち込む時も、そっと中から出して、黴くさい絵を従姉に見せながら、その値踏みなどをしてもらった。

八十五

「そう毎日ぶらぶら遊んでばかりいるのが、大体よろしくない。」世話好きな中村は、会社から退けて来ると、芳太郎に何か叱言を言いながら言った。

芳太郎はまだ庭で鶏を折打していた。鶏は驚きと怖れに充血したような目をして、きょときょとと木蔭をそっちこッち遁げ廻った。木の下や塀の隅はもう薄暗くなっていた。芳太郎は竿でその鶏をむやみに逐い廻していた。そこへ洋服姿の主が、縁から降りて来たのであった。

二人で鶏を鶏舎へ始末をしてから、縁側の方へ戻って来ると、中村は愚かしい芳太郎に、いつも言って聞かせるようなことを、また繰り返した。

「まさか労働するわけにも行くまいが、何しろ若いものが遊んでいてはいけない。体が怠けるばかりだ。お神に堅くなったという証拠を見せるつもりで、一時こういうところへ出てみてはどうかね。」と、中村はその時自分の知っている通運会社のことを言い出した。