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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

二十四

お庄も一緒になって、時々切なげな笑い方をした。

二十四

お庄の行った家は、お鳥の言うほど洒落てもいなかった。

お庄は家からかかった体裁に、お鳥から電話をかけてもらって、ある晩方日本橋の家を脱けて出た。その日は一日気色の悪い日で、店から来た束髪の女ともあまり口を利かなかった。お庄には若い夫婦の傍にいつけて、理窟っぽくなっているこの女の幅を利かすほど、煮物や汁加減が巧いとは思えなかった。学校出の御新造を笠に被て、お上品ぶるのも厭であった。

その晩は、白地が目に立つほど涼しかった。お庄は母親に頼んであるネルの縫直しがまだ出来ていなかったし、袷羽織の用意もなかったので、洗濯してあった、裄丈の短い絣の方を着て出かけて行った。

馬車の中は、水のような風がすいすい吹き通った。お庄は軽く胸をそそられるようであった。

お庄は賑やかな池の畔から公園の裾の方へ出ると、やがて家並みのごちゃごちゃした狭い通りへ入った。氷屋の簾、床屋の姿見、食物屋の窓の色硝子、幾個となく並んだ神燈の蔭からは、媚かしい女の姿などが見えて、湿った暗い砂利の道を、人や俥が忙しく往来した。ここはお庄の目にも昵みのないところでもなかった。