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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页
頭脳が悪いので、夜も深い睡りに陥ちてしまうなんということがなかった。
「僕はどうしても兄貴の世話にゃ何ぞならないで、きっと独りで行り通してみせる。」と、昨日から方々東京を見てあるいて、頭脳が興奮しているので、口から泡を飛ばして自分のことばかり弁っていた叔母の弟も、叔父の机のところから持って来た、古い実業雑誌を見ていながら、だんだん気が重くなって来た。この少年の家は、田舎の町で大きな雑貨店を出していた。お庄は時々その狂気じみた調子に釣り込まれながら、妙な男が来たものだと思って綺麗なその顔を眺めていた。
「さあ、鶴二も正ちゃんもお寝みなさいよ。」と、広い座敷の方へ寝道具を取り出して、そこへ二人を寝かせてしまうと、叔母は心配そうな顔をして、火鉢の傍へ寄って来た。近所はもう寝静まって、外は人通りも絶えてしまった。霊岸島の方で、太い汽笛の声などが聞えた。
叔母はその晩、しみじみした調子で、家の生活向きのことなどを、お庄母子に話して聞かせた。今の会社でいくらか信用が出来るまで、二度も三度もまごついたことや、堅くやっておりさえすれば、どうにかこうにか取り着いて行けそうな会社の方も、少し尻が暖まると、もうほかのことに手を出して、事務がお留守になりそうだということなどを気にしていた。