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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

三十九

「まさか弟が費消をするようなことはありゃしまいと思うがね。」母親は目を擦りながら、傍から呟いた。

「いずれ小崎さん一人の責任というんでもござんすまい。」爺さんは、小倉の洋服の衣兜から莨を出して吸いながら、いつまでもそこを動かなかった。

お庄はまた俥で、夜遅く叔父を迎いに出かけた。叔父の居所はじきに解った。そこは烏森のある小さい待合で、叔父はその奥まった小室に閉じ籠って女ぬきで、酒を飲みながら花に耽っていた。一座はお庄の知らない顔ばかりであった。顎鬚の延びた叔父の顔は、蒼白い電燈の光に窶れて見えた。

三十九

叔母の健康が、また綯りが戻ったように悪い方へ引き戻されて来た。暮から春へかけての叔父の一身の動揺が、一家の人々にも差し響きを起さずにはいなかった。

責めを引いて会社を罷めてから、叔父は閉じ籠って毎日碁ばかり打っていた。叔父のかなりに使えることを知っている人たちは、他へ周旋しようと言って勧めてくれたが、叔父は当分遊ぶつもりだと言って応じなかった。

「何を計画んでいるだか知らないが、月給はちっと下っても、やっぱり出た方がいいかと思うがね。」と、母親は弟嫁と一緒になって、叔父の心を動かそうとしたが、叔父は姉や妻にも、へこたれたような顔を見せるのが、忌々しかった。