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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

自分の今の分際では、それで十分だと考えた。

そのことを、同じ村から出ている友達に相談してから、新吉はようやく談を進めた。見合いは近間の寄席ですることにした。新吉はその友達と一緒に、和泉屋に連れられて、不断着のままでヒョコヒョコと出かけた。お作は薄ッぺらな小紋縮緬のような白ッぽい羽織のうえに、ショールを着て、叔父と田舎から出ている兄との真中に、少し顔を斜にして坐っていた。叔父は毛むくじゃらのような顔をして、古い二重廻しを着ていた。兄は菱なりのような顔の口の大きい男で、これも綿ネルのシャツなど着て、土くさい様子をしていた。横向きであったので、新吉は女の顔をよく見得なかった。色の白い、丸ぽちゃだということだけは解った。お作は人の肩越しに、ちょいちょい新吉の方へ目を忍ばせていたが、新吉は胸がワクワクして、頭脳が酔ったようになっていた。

寄席を出るとき、新吉は出てゆくお作の姿をチラリと見た。お作も振り顧って、正面から男の立ち姿を二、三度熟視した。お作は小柄の女で、歩く様子などは、坐っているよりもいくらかいいように思われた。

そこを出ると、和泉屋は不恰好な長い二重廻しの袖をヒラヒラさせて、一足先にお作の仲間と一緒に帰った。