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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页
机のうえに心を細くしたランプがおかれて消しや書入れの多い原稿がその前にあった。
二人はO氏の庭に植えるような草花を見て歩いたが、笹村は始終いらいらしたような心持でいながら、書生をつれたO氏にやはりついて歩いた。坂の下で、これも草花を猟りに出て来たI氏に行き逢った。植木の並んだ坂の下は人影がまばらであった。そこでO氏は台湾葭のようなものを見つけるとそれを二株ばかり買って、書生に持たせて帰した。I氏は花物の鉢を提げて帰って行った。
O氏は残った小銭で、ビーヤホールへ咽喉の渇きを癒しに入ったが、笹村も一緒にそこへ入って行った。二人は奥まった部屋で、ハムなどを突ッつきながら、しばらく話してから外へ出た。
往来の雑沓は大分鎮まっていた。O氏に別れた笹村は暗い横町からぬけて、人気のない宿へ帰って来た。
「僕の宿へ来てみないかね。」
別れる時笹村はO氏を誘って見た。
「いや休そう。君の下宿もつまらんでね。」
下宿では衆が寝静まっていた。長い廊下を伝うて、自分の部屋へ入ると、戸を閉めきった室内には、まだ晩方の余熱が籠っていた。笹村は高い方の小窓をすかして、しばらく風を入れていたが、するうち疲れた体を蒲団のうえに横たえた。