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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

二十

」とお国は一層深く傷口に触るような調子で、附け加えた。

「だから、私何だか変だと思うの。田舎で何か悪いことをしてるんじゃないかと思って。」と猜疑深い目を見据えた。

「田舎のことア私にゃ解んねえが、マアどっちにしても、今日は何とか様子が解るだろう。」

新吉の頭脳には、小野がこのごろの生活の贅沢なことがじきに浮んで来た。きっと危いことをしていたに違いないということも頷かれた。「だから言わねえこッちゃない。」と独りでそう思った。

お国は十二時ごろまで話し込んでいた。話のうちに新吉は二度も三度も店へ起った。お国は新吉の知らない、小野の生活向きのコマコマした秘密話などして、しきりに小野の挙動や、金儲けの手段が疑わしいというような口吻を洩らしていた。

二十

小野の拘引事件は思ったより面倒であった。拘引された日に警視庁からただちに田舎の裁判所へ送られた。詳しい事情は解らなかったが、田舎のある商人との取引き上、何か約束手形から生じた間違いだということだけが知れた。期限の切れた手形の日附を書き直して利用したとかいうのであった。訴えた方も狡猾だったが、小野のやり方もずるかった。