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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

「……急にそんなものを纏めて、どこへ持っていらっしゃろうと言うの。」

細君は、そこへべッたり坐って嘆願するように言った。

「静ちゃんも、ああやって病気して可哀そうですから、ちっとは落ち着いて、家にいて下すったっていいじゃありませんか。」

浅井は一片着け片着けると、ほっとしたような顔をして、火鉢の傍へ寄って、莨をふかしはじめた。持ち主の知合いに頼まれて、去年の冬から住むことになったその家は、蔵までついていてかなり手広であった。薄日のさした庭の山茶花の梢に、小禽の動く影などが、障子の硝子越しに見えた。

やがて奥へ入って行った浅井は、寝ている子供の額に触ったり、手の脈を見たりしていたが、子供はぱっちり目を開いて、物珍しげに浅井の顔を眺めた。

「静ちゃんお父さんよ。」

細君は傍から声をかけた。

「なに、大したことはない。売薬でも飲ましておけば、すぐ癒る。」

浅井は呟いていた。

「でも私も心細うござんすから、おいでになるならせめて出先だけでも言っておいて頂かないと、真実に困りますわ。」

浅井は笑っていた。

「お前が素直にしていさいすれば、何のこともないんだ。それも台所をがたつかせるようなことをしておいて、女狂いをしているとでもいうのなら、また格別だけれど。