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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

徳田秋声『日本の文学 9 徳田秋声(一)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:新世帯、足迹、黴、爛。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 346,393 字 · 692 页

青空文庫

」

いつかそんなことをお増にいわれたが、それはそうかも知れないと、浅井も心に頷けた。

「それに、己もちょうど働きざかりだ。これで女にさえ関係しなければ、己も一廉の財産ができる。」

浅井は呟いたが、それだけではやっぱりその日その日の満足が得られそうもなかった。

「ちっと女からも取っておいでなさいよ。」

お増は笑談らしく言うのであった。

「それじゃやっぱり駄目だ。金を費うからこそ面白いんだ。」

客に接したり、手紙の返辞を書いたりしていると、じきに昼になった。紛糾った事務に没頭した彼の忙しい心に、時々お今のことが浮んだ。隔たってからの少女から、どんな手紙が書かれるかが、待ち遠しいようであったが、仮に女を自分のものにしてしまってからの、内外の事件の煩わしさが、今から想像できるようであった。

四時ごろに、会社を出て行った浅井と、一人の友達の姿が、じきにそこからほど近い、とある新道のなかへ入って行った。隘いその横町には、こまごました食物屋が、両側に軒を並べていた。やがて二人は、浅井が行きつけの小じんまりした一軒の料理屋の上り口に靴をぬぐと、堅い身装をした女に案内されて、しゃれた二階の小室へ通った。