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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
浴場殺人事件の翌々日に葬儀がおこなわれ、その翌日、すなわち事件から三日後の夜八時頃のことであった。一郎青年はもうすっかり床ばらいをして、二階の書斎で父の伊志田氏と、今後の邸内の警戒について、いろいろと話し合っていた。
書生は元の通り五人にふえていたし、その上、北森課長の計らいで、警視庁の腕ききの刑事が一人、邸内に泊まり込んで警戒に当たっていてくれた。それほどにしても、一郎はまだ安心はできないというのである。
「しかし、もうこれ以上、どうも仕方がないじゃないか。お前に何か名案でもあるのかね」
伊志田氏は一郎ほどは神経質でなかった。
「引越しをするんです。僕はこの陰気な広い建物がいけないと思うんです。あいつはこの古い西洋館にずっとつきまとっている何かの怨霊かもしれません。僕はこうしていても、あいつが、屋敷のどこかの隅に身を潜めて、じっと機会を狙っているような気持がして仕方がないのです。お父さま、僕たちは引越しをするわけにはいかないのでしょうか」
一郎は熱心に転宅を勧めるのであった。
「ウム、それはわしも考えないではない。しかし、あんなやつ一人のために、永年住み慣れたこの家を引越すというのも、なんだかあいつに負けて逃げ出すようで、気が進まないのだよ。