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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

第三の銃声

明智はさももどかしげに、一そう乱暴に髪の毛をかきまわしながら、声に出して独り言をいうのであった。

第三の銃声

お話はその翌日の夜更け、伊志田邸の塀外に移る。それまでは、同邸には別段の異変も起こっていなかった。だが、その夜、又しても新しい怪事件が突発したのである。

伊志田屋敷の裏手には、建物を取毀したまま永いあいだ空地になっている原っぱがあった。夜更けの十一時、闇の原っぱの立木の茂みの蔭に、人の息遣いが聞こえた。

おとなではない。鳥打帽子に紺の詰襟を着た十五、六歳の可愛らしい少年である。木蔭に身を隠して、何かを待っている様子だ。時々立ち上がって、背伸びをして、伊志田邸の例の三階の円塔のあたりを、じっと見つめている。

この少年は明智探偵の助手の小林芳雄であった。子供とはいえ、これまでにも明智を助けて、いろいろの手柄を立てた名助手である。病院で明智が伊志田一郎に、塔の合図の見張りをさせてあると語ったのは、この小林少年のことであった。

小林はきのうもおとといも、同じ場所に宵から夜明けまで、辛抱強い見張りをつづけていた。だが、円塔の窓にはいっこうそれらしい光も見えないのであった。