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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

麻酔薬

だが、それは日頃の一郎の性格からはなんとなく信じがたい行動ではないか。

麻酔薬

その翌日の午後になって、ゆうべ顔見知りになっている北森捜査課長の部下の三島という古参刑事が、一人の同僚をつれて伊志田家を訪ね、もう一度あらためて邸内外の捜索をしたいと申し入れた。

伊志田氏はむろん喜んで承諾した。妻を失い、鞠子を失い、今また一郎と綾子が行方不明となって、残るは老母と伊志田氏とただ二人、さすが強情な伊志田氏も、茫然自失、なすところを知らぬていであった。

三島刑事は、伊志田氏の案内によって、犯罪現場の庭から、円塔内部の各階、一郎、綾子の寝室と、順序よく調べて行ったが、ゆうべ同様、何一つ手掛りらしいものを発見することはできなかった。

「念のためにほかの部屋も一と通り見て廻りたいのですが」

刑事の言葉に、伊志田氏はまた先に立って、まず階下の部屋部屋を案内した。階下には大小八つの部屋があったが、七つ目までは別段の発見もなく、あとには母屋から円塔への通路に接した空き部屋が残っているばかりであった。

「ここは物置きになっているのです。不用の机や椅子などがほうり込んであるのです」