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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

何も意味はないんだ」

「綺麗な娘さんでもいるなら兎に角」

「ハッハヽヽ」

「しかし奥さんはナカ/\綺麗な人で、思い切って若作りですな」

「うむ。子供がないからね」

「一寸有閑マダムの方でしょう。よく出てお歩きになります」

「よく知っているんだね」

「こゝは電車への関門ですから、毎日見ています。それにチョク/\お顔を当りにお出になりますから」

「成程」

「余計なことを伺うようですが、お幾つですか? 美人と西洋人の年は何うも俺にはキッカリしたところが判りません」

「三十五だよ。僕と十違うんだから」

「それじゃ未だ本当にお若いんですな」

「若いとも。それだから小母さんというと厭がる。奥さんと呼んでくれって註文だ」

「それは当り前でしょう」

「夫婦ともよく物の分った人だよ」

「御主人は十年からのお得意さまです。好い人ですな」

「これこそ人格者だよ」

「書生さんを大学へ通わせるなんてことは一寸出来ない芸当です」

「えゝ?」

「俺は初めの中、あなたを大谷さんの甥御さんだとばかり思っていましたが、二三年前に泥棒が入った時の新聞で分りました。書生安達の談と出ていましたから」

と親方はその折の間違った記事をそのまゝ信じているのらしかった。