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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

待遇問題

待遇問題

安達君は乗換の電車を待ちながら、青空を仰いで、意気軒昂たるものがあった。卒業後半歳にして、竟に就職戦線を突破したのである。勤め始めてから丁度一週間、仕事の方はまだ無我夢中だ。サラリーマンとしては文字通りに日が浅い。しかし得意の度合はそれに反比例を保っていた。もう一人前だと思うと、何となく尾鰭がついたような心持がする。

「おい。何うだい?」

「駄目だ。然う言う君は何うだい?」

「矢っ張りいけない」

「いつになったら目鼻がつくんだろうかな?」

と心細い問答を繰り返していた頃とは違う。

待っている電車が来ない中に、もう用のない方が又着いて、乗換の客が際立って数を増した。安達君は多少迷惑を感じた。押し合いになるから、うっかりしていると取り残される。一体、安達君は控え目の性分だ。人を突き退けて自分丈け進む気になれない。学校時代には、その為め見す/\遅刻したことがあった。しかし今は出勤だ。遅れては困る。覚えず腕時計を見て、努力を心掛けた。

「やあ。安達君」

と折から声をかけて、人を分けて来た青年があった。同じ級に机を並べた村上君だった。然う別懇の間柄でもないが、野球の応援団を指導していた男だから、一種の公人として親しみを持っている。