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きゅうこんさんじゅうし
求婚三銃士
佐々木 邦
「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页
策士吉川君
実は私、クレ/″\もお頼みを受けていますの」
「はゝあ」
「好いのがあったら勧めて下さいって」
「あるんですか?」
「えゝ。二人も三人も」
「本当ですか?」
「御覧なさい。前途遼遠が乗り出していらっしゃいましたわ」
と奥さんはナカ/\機敏だ。
策士吉川君
安達君は大谷夫人には遠慮がない。何でも打ち明けて話す。冗談も言う。しかし大谷さんと来ると苦手だ。立志伝中の人だと聞いているから気が引ける。大谷さんは郷里の中学校を出ると直ぐに東京へ逃げて来て、苦学をしながら、私立大学を卒業したのである。独立独歩だ。○○銀行へ入ってからも出世が早かった。目下市内の某支店長を勤めている。安達君に取っては中学校も先輩、大学も先輩だから、事情に通じ過ぎていて、監督者としては甚だ煙たかった。
「安達君、この頃は何うだね?」
と大谷さんが訊く時は、安達君、いつも胸に覚えがあった。
「相変らずです」
「ノートは何でも皆自分で取っているんでしょうね?」
「はあ」
「溜めて置いて、人から借りて写したんじゃ駄目ですよ」
「はあ」
「此年から民法があるんでしょう?」
「あります」
「田中さんですか? 林さんですか?」