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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

と安達君は急に思い当った。あの折、女中が来客中だと言った。直接聞かなかったが、瀬戸君が廊下へ出てそう確めて来た。それから急に帰ろうと言い出した。あれだ。閣下自身がお相手をするところを見ると、丸尾夫人や大谷夫人の比でなく、余程の有力者に相違ない。

安達君はもう奥さんがソロ/\出掛ける時分だろうと思って、下りて行って見たら、奥さんは電話にかゝっていた。

「はあ。はあ/\。無論差支ございません。御一緒に願います。はあ。どう致しまして。恐れ入りました。それでは後程。さよなら」

と何となく耳寄りだった。

「橋本さんからですか?」

「はあ。もう下りていらっしゃいましたの? 御都合次第で早耳ね」

「有望ですか?」

「御招待よ、あなたと私と、今晩六時ですって」

「僕は今晩は先約があります」

「嘘でしょう?」

「はあ。一寸見識を立てたんです。お供致します」

「詰まらない体裁ね」

「漸く運が向いて来ました。天を拝し、地を拝し……」

「調子づくものじゃありませんよ」

「ハッハヽヽ」

「幸い主人は本店の重役さん達と御一緒で晩くなりますから」

と奥さんは一寸振り廻した。大谷支店長は信用が篤い。日曜は一日ゴルフで重役連中に魚交りをする。