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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「しかしあれは事実無根です。隣りの書生の手柄を奪ったんですから」

「あなた。何か武勇伝はございません?」

「さあ。ないこともありませんよ」

「一つ何うぞ」

「考えて見ます」

「あら、御創作じゃ駄目よ」

「ハッハヽヽ」

「狡いのね」

「いや、事実談です。壮漢を数名走らせました」

「まあ。豪いのね」

「後から僕が血相を変えて、韋駄天のように追って行きました。しかし先方は追いつかれまいとして一生懸命です」

「何の時?」

「学校の運動会です」

「まあ」

「これをランニング競走と申します」

「美事引っかゝりましたわ。ナカ/\おやりになりますのね」

と佳子さんは褒めてくれた。

瀬戸君はこの通り、やればやれるのである。法螺も吹けば吹ける。人命救助の話がその後問題になった。

「それは嘘ですよ」

と吉川君が断定した。

「真面目で仰有いましたわ」

「申込書の賞罰のところに書き入れてありましたか?」

「書いてございませんの」

「嘘だからです。まさかそれまでは欺けません」

「私、悉皆本気にしてしまって、大いに敬意を表して上げましたわ」

「第一、瀬戸君自身が殆んど泳げないんです」

「あらまあ!」

「僕は一緒にプールへ行ったことがありますが、迚も人を助ける腕前じゃありません。